日本って凄い〜素人による介護記録④〜

家族の闘病

運命の退院カンファレンスの日が来た。

複数関係者が集まる以上、日時の変更が難しいのと、もう直近だったので、当初の予定通りこの日の午後行われることになっていた。(もちろん午前中に亡くなってしまった場合全てが無しになるが)

朝、母からLINEが。即確認すると、現在のバイタル(血圧、酸素、体温)だった。元看護師の母や現役看護師の妹と違い、私にはその数字の意味するところがあまり分からない。が、昨日からあまり変わっていないということだけ分かった。

そのLINEに返信すると、母から続けて買い物の指示が出た。

「紙オムツ、パット、おしり拭き、使い捨てビニール手袋買ってきて」

オムツ、おしり拭き、手袋まではギリ分かるが、パットって何の?と思っていると、妹と相談して、他にも要るものあれば買って、とのこと。なるほど、妹なら詳しいだろう。一緒に買いに行けば問題なさそうだ。

了解の旨返信すると、母からまた返信が。

「お願いします、かわりなく、これなら帰れる」

しばらくして、予定していた時刻通りに介護ベッドの業者さんが来た。玄関から入れられないかもと思い縁側を案内したが、ベッドは組み立て式で、全然玄関からで大丈夫だった。業者さん二人ががりで、テキパキと組み立ててくださった。

「床ずれ防止のために自動で体圧を分散してくれる良いベッドなんですよ。このブランドでっていう指定が来ることもあります」

「へー!」時代は私が知らない間も着実に進化していたようだ。

ベッドの搬入を見届けてから、私は妹と一緒にドラッグストアへ行った。今まで寄り付いたことのない介護用品コーナーへまっすぐ向かうも、私にはどれを買うべきなのかさっぱり分からない。

妹に母からのLINEを見せると、さすが、テキパキと商品を選び始めた。

「オムツは私も自分では買った事ないからなぁ…でもライ〇リーなら間違いないでしょ。父さんならMかな。オムツパットは大きいオムツの内側に敷いて使うもので、汚れがパットの中で収まってれば大きいオムツまで替えなくて済むよ。あと、尿とりパットも要るね。男性の場合は“チン巻き”って言って、おチンにこれをクルクル巻きにするんよ」

何も知らない私への説明を交えながら、妹はどんどん商品をカートに突っ込んでいく。ほとんど迷いなく、最大容量のオムツとパットを選んだので、内心私はぎょっとした。そんなにオムツを使うほど、父が生き長らえるとは思えなかったのだ。

しかしすぐに思い直す。ここでちょっとしか入ってないオムツを買うことは正解なのか?

いいや。

そんな縁起の悪いこと出来るか。

妹にしても、その行為は、祈りに近かったのだろう。

だから、選ぶ直前、ほんの0.2秒ほど迷って、だけどその後なんの余地も挟ませないほどきっぱりと、絶対に大きすぎるパッケージをカゴに放り込んだのだろう。

妹はなおもテキパキと必要であろうものを選び取っていく。

「これ!すごく良いよ、泡で出てくるワセリン。ハンドソープみたいでしょ?塗ったら普通のワセリンに戻ってくれる。使いやすいよ」

「何、そんなのあるの?凄っ」

「あとは口腔ケア用品だね、スポンジブラシは持ってるらしいから、口腔ケアジェルを買おう」

何それ?という顔の私に、すかさず妹が教えてくれる。「スポンジブラシにつけて口の中を綺麗にするのに使うものだよ。梅味だって。父さん食べられないから、味感じられるのいいかもね。あと、陰部洗浄のためにドレッシングボトルがあればいいんだけど、それは100均で見ようか」

どうやらドレッシングボトルにぬるま湯を入れて、陰部の汚れを落とすのに使うらしい。な、なるほど…!!

その後すぐに100均に行き、無事ドレッシングボトルを発見。一緒に各種用品を用途ごとにまとめて入れる用のプラカゴも買った(口腔ケア用、オムツ替え用)。

マッッッジで妹がいて良かった。彼女がいなければこんな買い物私には不可能だった。

午後にもカンファのために病院には行くが、午前中のうちに1度父の様子を見に行くことになり、妹の運転するバカでかいジープでそのまま病院へ。

父は、落ち着いていた。家に連れて帰るという構想が、俄然現実味を帯びてきた。

父に退院準備が着実に進んでいることを報告し(嬉しそうに頷いていた)、私と妹は一旦家へ。

在宅酸素の業者が来て、機械の使い方の説明を受けた。病院で供給されていた酸素の量がわりと多かったので、業者が持ってくる機械で事足りるのか心配だったが、どうやら大丈夫そうだ。

操作は単純で、難しくはなかったが、作動させるために精製水が必要とのこと。これは今日休みを取って待機してくれている旦那さんに買ってきてもらうことに。

父のシーツも敷いて、準備万端!!!!!

アプリ予約でスムーズに購入したマックを、妹と妹の子供たち、私と旦那さんで平らげて、旦那さんに子供たちを託し、いざ、退院カンファレンスへ出発!!!

カンファレンス室に、主治医と若い看護師、退院担当看護師(この人がこのカンファの取りまとめのようだ)、看護師長(自己紹介以外全く喋らなかった)、ケアマネージャー(在宅介護のプラン作成や取りまとめなどを行ってくれる)、訪問看護ステーションの代表、往診に来てくれることになった父の元々のかかりつけ医、薬局さん、母、私、妹、が集合し、カンファが始まった。

みんなの自己紹介をざっと済ませ、主治医からこれまでの父の病状の経過と現状を説明される。各々必要に応じてメモを取ったり、薬や看護についての質問があればしたりする。あとは、これからすぐ自宅に介護タクシーで帰るので、その手順と段取り確認。ほんの25分くらいで終わった。

驚きだったのは、こんな大変な事に巻き込んでくれちゃってめんどくさい、みたいな雰囲気を、微塵も感じなかった事だ。みんな普通に親身になって話を聞いてくれていた。ケアマネさんも訪看さんも、無茶苦茶感じの良い方だし、見慣れたかかりつけ医は母がこの4月まで勤めていた医院の先生で、顔を見るとほっとした 。

あまりにも手厚い処遇だ。このサービスが介護保険のおかげで(一部は医療保険)すごく少ない金額で受けれるんだから、日本って凄いな。

⑤へ、続く…!!!!!!!(なっが!)

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