君がいるだけで心が強くなれる~素人による介護記録⑪〜

家族の闘病

そこからはまた、和やかに時は過ぎた。

私は隙を見て父の隣で、アンドリュー・ヨーク作曲のクラシックギター曲「Home」を弾いた。母も気に入ってくれたらしく、弾き終えた時、「素敵な曲だね」と言ってくれた。

本当にHomeはいい曲なのだ。弾く度、聞く度にそれを実感する。

ただ私が明らか下手くそなので、「もっと練習してね😊」と、妹に言われる始末(さすが身内、オブラートとか一切ない)

そこから妹が「楽器の演奏って良いね。母さん春に退職したんだし、今後、何か楽器やるといいよ」と言い出し、「今から始めるのにおすすめの楽器は何かある?ギターとの合奏に向いてるものとか」と私に聞いてきた。

私は即答した。「カホンだねぇ」

それからカホンがどのような楽器なのかを二人に説明(カホンとは、見た目は図工室の椅子みたいな感じが一般的な、手を使って叩く打楽器である)。凄腕パーカッショニストのすずきかのんちゃん(私が超絶推させていただいているショルヘーノさんとのコンビ「ショルヘーノ・スパニッシュスープレックス」でもお馴染み)に教えていただいたおすすめメーカーを検索し、ちょうど中古品を発見!(でも三万円くらいした)

しかし調べてはみたものの、今はカホン買ってる場合じゃないだろうな。父、危篤だし。…という結論に、私は至った。何より、母本人が「やりたい!」とまでは言わなかった。

そんなわけで「今じゃない」と、その時はスルーしたカホン。余談だが、数ヶ月経った今、私がほしくなりネットで見ている。が、探しても探しても市場に出てきてくれない。そのメーカー自体が廃業していて新品が出ないということもあり、欲しがっている人が見つけ次第買っていくのだろう。仕方ないとはいえ、あの時は惜しいことをした😂本当に全然売ってないんだよ〜。

この介護期間中は、大好きなショルヘーノさんのライブ配信にリアタイすることが難しかった(この時期ショルヘーノさんは、かのんちゃんと二人でツアーに回っていた)。

それでも、何とかほんのちょっとだけ見れた時…

ショルヘーノさんがいつものように、歌い、フラメンコギターを掻き鳴らし、楽しそうにMCする姿に。

かのんちゃんがいつものようにすっごい笑顔で、ダラブッカを叩き奏でる姿に。

どれだけ、どれだけ救われたか分からない。

「ショルヘーノさん今日も凄すぎ。かのんちゃん、めっちゃ笑ってる。二人とも可愛いなぁ」呟きながら、スマホの画面は涙で霞んでいた。

東日本大震災半年後くらいの当時、東北の方のコメントで、次のような趣旨のものがあったことを私は思い出していた。

「この同じ日本の、遠く離れた場所では、何不自由なく幸せに暮らしている日本人の方々がいる。そう思うと、元気がもらえるんです。被災地は大変なんだから楽しいイベントは自粛と言わず、普通に楽しく幸せに過ごしてください。みんなの幸せが、私たちの励みにもなるので」

当時の私は、この発言にいまいちピンときていなかった。そんなものなのか?と、不思議に思ったくらいだ。

今は少し、分かる気がする。

あの時、辛い現状を抱えた私とは全然関係なく、「ショルヘーノ・スパニッシュスープレックス」は、この日本のどこかで、いつものように楽しそうに演奏してくれていた。それだけで、私はとても救われていたから。

涙を鬼ほど拭きまくって普通の顔を作り、そこからちょい口角を上げる。口角を上げるのは簡単だった。ショルヘーノさんとかのんちゃんの姿を思い浮かべるだけでいいのだ。

この日の私は父のところと、妹の子供たちのところ、スーパー、キッチン、自分家の居間(旦那さんが真ん中の生活リズムのアホさをずっと説教していた。本当に行く度ずーっと説教していた)を行ったり来たりした日だった。

金曜に毎日来ると宣言していた従兄弟がこの日も来てくれて、父にまたでかい声で色々話しかけてくれた。父にほとんど付きっきりの我々三人を労い、「あんた達はちゃんと寝ること!ちゃんと食べること!」と、美味いパンをくれた。前日も美味いチョコ貰ったし(有り難さの臨界点を突破するくらい、有り難かった)

母方の叔母とおばあちゃんも来てくれた。おばあちゃんは、秘密のコペカチータさんのグッズTシャツを着こなしていた(超絶似合ってた)。叔母も我々にお土産の美味しいスイーツと美味しい卵をくれた。みんな、我々三人のことを心配してくれているのだ。有り難い。

そしてやっぱり夜にはみんなでUNOをやった。1回私がバカ勝ちしてしまい焦った(バカなんだよね、私)。もちろん旦那さんにはまたしても呆れられた。

そんな風に、土曜日は過ぎていった。

「明日の夕方、新幹線で帰るよ」真ん中は私に言った。そんなことを言い出せるくらい、父は落ち着いていた。と、いうか、表面上は落ち着いて見えた。

実際には、オムツ替えの度、妹の顔は曇っていた。オムツ替えに関わっているのは、ほぼ私、母、妹だけだ。(1回うちの長男が手を貸してくれたが)

「…会社には、おじいちゃんの現状は言ってあるの?」

「うん、言ったよ。もしかしたら来週、忌引休暇使うかもってことも言ってある」

「上出来。…明日のおじいちゃんの容態次第だけど、新幹線はキャンセルになるかもね」

「そか。その時はまた言ってくれ」

「了解」

例によって、私はまたしても自分の部屋で寝ていいと言われたので、自分の部屋で就寝した。

明日はどんな日になるのだろう。

⑫へ続く!!

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